メキシコが世界に誇る文化、ルチャリブレ。今回は、その情熱を「コレクション」という形で体現しているミゲル・ウリベ氏の自宅、通称「クエバ(洞窟)」を訪ねました。200枚を超えるマスクと、愛の詰まったカスタムフィギュアに囲まれた、熱いインタビューの全貌をお届けします。
ミゲール・ウリベが語る、ルチャリブレ・コレクションの真髄
――ミゲルさん、本日はこの素晴らしい「聖域」にお招きいただきありがとうございます。ルチャへの並外れた情熱について、ぜひ詳しくお聞かせください。
ミゲル:こちらこそ、La Tijera(ラ・ティヘラ)が「コレクショニズム」というルチャリブレの重要な側面に注目してくれて嬉しいよ。私のコレクションは、一枚一枚にルチャの歴史と私個人の物語がある。ぜひ楽しんでいってください。
――まず、ルチャリブレへの情熱はどこから始まったのですか?
ミゲル:子供の頃、アマチュアレスリングをしていた叔父がよく試合に連れて行ってくれたんだ。でも子供だったから、当時は予算がなくてね(笑)。持っていたのは安いマスクが3枚くらいだった。
大人になってから、友人が主催したサイン会で憧れの「ウルティモ・ゲレーロ」に会ったんだ。彼とじっくり話をして、持参したマスクにサインをもらったのがはじまりかな。「いいマスクだね」と言ってもらえて……あの交流が、マスクを通じてアイドルの欠片を手に入れたいという僕の収集癖に火をつけたんだ。
――初めて会場でルチャリブレを見た時のことは覚えていますか?
ミゲル: 5歳くらいの時、アパトラコでの子供の日の興行だった。会場の外で「エル・サント」の旗を買ってもらって、彼が来るのを心待ちにしていたんだけど……結局サントは来なくて・・(笑)。でも、ルチャドールたちのマント、ブーツ、色鮮やかなマスク、そしてリング上でのアクロバティックな動きに一瞬で恋に落ちて。特にあの時の「ボラドール(ボラドールJr.の実父)」の鮮やかなコスチュームは、今も記憶に焼き付いているよ。
――今、ここには何枚のマスクがあるんですか?
ミゲル: 難しい質問ですね。私はマスクを袋や箱にしまっておくのが嫌いで、座った時にいつでも眺められるように展示したいんですよ。だから、スペースがなくなって「箱にしまわなきゃ」と思ったら、それが私にとってのブレーキですね。同じ選手の重複したマスクがあれば、他のコレクターに譲ることもありますよ。

――特別な「お宝」を紹介していただけますか?まずは収集の原点となった一枚があれば。
ミゲル:(緑色のマスクを手に取る)これですね。ウルティモ・ゲレーロの緑のジャパニーズ・ラメ(金糸)のマスク。金と黒の本革が使われているんですよ。彼にこれを見せたら「日本で試合する時はここにサインするんだよ」と、サインの仕方も教えてくれました。
――パンデミックの時にマスクが増えた?
ミゲル: 実はパンデミック中にコレクションはかなり増えたんですよ。当時ルチャリブレの大会が凄く少なくなって、選手たちが個人的に連絡をくれて、「ミゲル、今仕事がないんだ。俺の試合用マスクを買ってくれないか?」と。僕は大好きな彼らを支援できるならと思って多くのマスクを購入しました。今は多くの選手がSNSで直接販売していますが、ファンにとっては試合に行けなくても憧れの人と繋がれる手段になりました。
――あなたにとっての「アイドル」は誰ですか?
ミゲル: 僕のアイドルはずっとウルティモ・ゲレーロとボラドールです。今はその息子のボラドールJrとも親交がありますが、あの空中戦の美しさは本当に素晴らしい。
――コレクションの中で入手が一番難しかったマスクはありますか?
ミゲル: 最近の選手なら「エチセロ」ですね。彼がメキシコシティに来たばかりの頃に出会ってマスクを買ったんですが、その後彼がスターになって多忙になり、追加で頼むのが本当に難しくなりました。会場で見かけても「すぐ次の試合があるから」と、なかなかゆっくり話す機会がないんですよ。
――日本人選手のマスクもありますね。
ミゲル: 日本のレジェンド、「タイガーマスク」は外せませんね。ここには初代タイガー(佐山聡)のサイン入り試合用マスクと、4代目のものがあります。
それから「ウルティモ・ドラゴン」。これはメキシコシティのDragomanía(ドラゴマニア)というイベントで、彼が試合直後に脱いで直接私に渡してくれたものです。
もう一つ、「獣神サンダー・ライガー」のマスク。これは友人のパンテーラから譲り受けたものだが、後にライガー本人に確認してもらって、間違いなく彼の私物だとお墨付きをもらいました。

――歴史的な古いマスクについても教えてくれますか?
ミゲル: 下の段には古い時代のものを置いています。ドクトル・ワグナー(シニア)、リスマルク、カネック。特に「マテマティコ」のマスクは、通常のデザインと違って目が怒っているような形をしていて、数字も額にある珍しいものです。これは彼がテクニコの時に、ライバルとの抗争を際立たせるために特別に使ったものです。
「ブルー・デモン」のマスクは、ブルー・デモンJrに「これは父がアルフレド・ブシオに作らせた本物だ」と鑑定してもらいました。「エル・サント」のマスクも、息子のエル・イホ・デル・サントから「父の聖域に飾りたいから譲ってくれ」と頼まれたのですが、今はまだ手元に置いておきたいのでここにあります(笑)。
――偽物と本物を見分けるためのアドバイスはありますか?
ミゲル: 非常に難しいですが、徹底的に「調査」することですね。どのマスカレロ(マスク職人)が、どの時代に、どの選手と仕事をしていたのか。例えばアルトゥーロ・ブシオが使っていた革の質感、縫い目、紐通しの形。現代では手に入らない当時の素材もあります。最近は「試合用」と偽って売る悪徳な業者もいるから、選手本人から直接買うのが一番だと思います。それが選手へのリスペクトと支援にもなると僕は思っています。
――最後に、あなたにとってルチャリブレとはなんでしょう?
ミゲル: 私の情熱そのものですね。リングの上でテクニコとルードがぶつかり合い、終われば互いを認め合う。あの華やかな衣装、技の応酬、会場の熱気……そのすべてを愛しています。
これからコレクションを始める人には、「自分が心から情熱を感じるもの」を集めてほしいと言いたいです。枚数なんて関係ありません。子供の頃に手に入れたスポンジのマスク10枚だって、そこに愛があれば立派なコレクションだとおもいます。ただ自分の好きなもの、愛している物に情熱を燃やし続けてください。
終わりに・るちゃ男の独り言
ミゲル氏のインタビューを見た時に、そこには単なる「物」の集積ではなく、メキシコの文化とルチャドールたちへの深い愛情が詰まっていることを強く感じました。
それは、飾られた、数々のマスクの形、状態の良さからもわかるものでした。
彼の活動はFacebook(Colección Miguel Uribe Tor)でもチェックできます。ルチャリブレの奥深い世界、あなたも覗いてみては?





