記事元:Tijera Luch
文:るちゃ男yAI記者GEMINI
メキシコシティ議会において、ルチャリブレファンなら無視できない画期的な法案が提出されました。ダイアナ・サンチェス・バリオス議員が提案した、「65歳以上の元選手、および現役中の負傷者に対する終身経済支援」を盛り込むメキシコシティ体育法第87条の改正案です。
ルチャリブレがメキシコシティの無形文化遺産に認定されて久しいですが、その華やかな舞台を支える選手たちへの公的な保障は、これまで驚くほど未整備でした。今回の改正案は間違いなく素晴らしい一歩ですが、同時にルチャ界が抱える根深い問題も浮き彫りにしています。
なぜ今まで支援が行われなかったのか?
90年以上の歴史を誇り、国のアイデンティティとも言えるルチャリブレにおいて、なぜこうした制度が整っていなかったのでしょうか。そこには、この業界特有の「あいまいさ」と「過酷な現実」があります。
- 膨大な選手数とライセンスの不透明さ
メキシコには数千人のルチャドールが存在しますが、全員が「ルチャ・リブレ委員会」のライセンスを所持しているわけではありません。ライセンスがなくとも試合に出場できる興行は数多く、誰を「支援対象のプロ選手」と定義するかの線引きが極めて困難です。
- 負傷と現役続行の境界線
ルチャにおいて怪我は日常茶飯事です。どの程度の負傷で支援を発動させるのか、また、エル・カネック選手のように70歳を超えてもなお現役を貫くレジェンドたちの「引き際」と「保障」をどう両立させるのか、明確な基準がありません。
- 財源の確保という大きな壁
終身支援を継続するための予算をどこから捻出するのか。チケット代の上乗せか、あるいは公的な税収か。歴史的な伝統を守るためのコストを誰が負担するのかという議論が、解決案として必要不可欠です。

提示されている問題解決の方向性
こうした問題を打破するために、現在いくつかの解決案が議論されています。
1.ライセンス管理の厳格化と一元化
支援を受けるための条件として、公的なライセンス保持期間を設けることで、未所持選手の登録を促し、業界全体の透明性を高める。
2.負傷認定のための専門医師団の設立
リング上の事故や職業病を判定する専門の医療機関と連携し、支援の適用基準を客観化する。
3.文化遺産枠としての予算確保
観光資源としてのルチャリブレの収益の一部を、選手たちの福利厚生に還元する基金の設立。

るちゃ男の独り言:期待と不安の入り混じる転換点
ルチャリブレを長年観続けてきた、また実際に選手として仕事をした一人として、命を削ってリングに上がる彼らに十分な保障が与えられるべきだという点には、100%同意します。彼らは単なるアスリートではなく、メキシコの文化を守る戦士だからです。
しかし、今のルチャリブレ界の現状——ルーズな管理体制や財政難——を直視すると、この支援案がそのままスムーズに実現するとは到底思えません。実現には山積する問題を一つずつ紐解いていく必要があり、また、メジャー団体と言われるCMLL、AAAの協力も必要となり簡単にはいかないのが現実でしょう。
この支援案が、選手たちの尊厳を守る盾となるのか、あるいは議論のまま終わってしまうのか。今後の議会の動向に、引き続き注視していきたいと思います。

